ベンチプレス vs ダンベルベンチプレス 筋肥大と筋力向上にどちらが効果的?

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2025.05.23

筋トレ

ベンチプレス vs ダンベルベンチプレス 筋肥大と筋力向上にどちらが効果的?

ベンチプレス vs ダンベルベンチプレス 筋肥大と筋力向上にどちらが効果的?

ベンチプレス vs ダンベルベンチプレス 筋肥大と筋力向上にどちらが効果的?

ベンチプレス(バーベルを使う場合)とダンベルベンチプレス(ダンベルを使う場合)は、胸の筋トレの代表的な種目です。

それぞれ大胸筋(胸の筋肉)、三角筋前部(肩の前側の筋肉)、上腕三頭筋(腕の裏側の筋肉)に効くと言われますが、筋肉の大きさを増やす筋肥大効果や、重量を挙げる力を高める筋力向上効果に差はあるのでしょうか?

本記事では、初心者・中級者・上級者といったトレーニング歴の違いも考慮しつつ、ベンチプレスとダンベルベンチプレスの効果を比較・分析します。

それぞれの特徴や研究結果をもとに、どちらがどんな局面で優れているのかを見ていきましょう。

大胸筋への刺激:筋肥大効果の比較

ベンチプレスとダンベルベンチプレスは、いずれも大胸筋を主要ターゲットとするエクササイズです。

一般的な印象では、ダンベルの方が可動域が広く深く降ろせるため胸筋を大きく刺激できそうですが、研究の筋電図(EMG)測定によれば胸筋の筋活動量は両者で大きな差がないという結果が多いようです。

たとえばWelschら(2005年)は6RM(6回挙上できる最大重量)での実験で、バーベルとダンベルのベンチプレス中の大胸筋の筋電図に有意差はないと報告しています。

またSaeterbakkenら(2011年)の研究(被験者:トレーニング経験1年以上の男性)でも、1RMテスト時にバーベルとダンベルで大胸筋の筋活動はほぼ同等でした。

一方で、ダンベルの方が胸筋の活動が高いと示唆するデータもあります。

Fariasら(2017年)の研究では、10RM相当の重量で4セット行った場合、ダンベルベンチプレスの方がバーベルよりも大胸筋の筋電図が有意に高かったと報告されています。

これはダンベルを使うことで左右の手を寄せるような水平内転(腕を胸の中央に寄せる動き)が可能となり、胸筋の主要な働きである「腕を内側に寄せる動作」が強調されるからかもしれません。

一方、バーベルでは両手の間隔が固定されているため、動作中に腕同士を近づけることができず、胸筋の収縮様式に違いが出ます。

とはいえ、総合的に見ると胸の筋肥大効果に大きな差はない可能性が高いです。

実際、安定性(バーベル)と不安定性(ダンベル)の違いが筋肥大に影響を及ぼすか調べた研究でも、筋肉量の増加は両者でほぼ同等だったとの結果があります。要するに、筋肉への刺激という観点ではバーベルでもダンベルでも大胸筋をしっかり追い込めるなら、筋肥大の効果はほぼ同じと考えてよさそうです。

三角筋前部への刺激:肩の筋肉への影響

ベンチプレス系の種目では、胸だけでなく肩の前側(三角筋前部)も強く関与します。バーベルとダンベルで三角筋前部の筋活動には大きな違いがないことが研究からわかっています。

Saeterbakkenら(2011年)もWelschら(2005年)も、ダンベルベンチプレスとバーベルベンチプレスで前肩の筋電図はほぼ同等であると報告しています。

ただし、バーベルかダンベルか以上にフォームや角度の方が肩の関与に影響する可能性があります。

例えば、肩の負担を減らし純粋に胸に効かせたい場合は、肩甲骨を寄せて胸を張り、肘を開きすぎないフォームが推奨されます(これは種目共通のテクニックです)。

どちらの種目でも三角筋前部にも刺激が入る点は共通ですが、筋肥大効果の違いは小さいでしょう。

したがって肩の前部に関しても、バーベルかダンベルかで筋肥大効果の優劣はほとんど無いと考えられます。

上腕三頭筋への刺激:種目による違い

上腕三頭筋(腕の裏側の筋肉)はプレス動作で肘を伸ばす際に使われるため、ベンチプレスでは重要な役割を果たします。

しかし、バーベルとダンベルでは三頭筋の関与度合いにはっきりとした違いが見られます。

バーベルベンチプレスの方が上腕三頭筋の筋活動が高いことが複数の研究で示されています。

Saeterbakkenら(2011年)は、ダンベルよりバーベルの方が三頭筋の筋電図が有意に高いことを報告しています。

同様にFariasら(2017年)も、ダンベルベンチプレス中の三頭筋活動はバーベルより低いとしています。ダンベルではバーベルほど三頭筋を使わない理由の一つとして、バーベルベンチプレス特有の「横方向への力」が挙げられます。

バーベルを握って押すとき、人は無意識にバーを左右に「引き裂く」ような力(外向きの横力)を加えています。

この横力の約25%は垂直方向の押す力に対して発生しており、この動作に三頭筋が大きく貢献します。

一方、ダンベルでは両手が自由に動くため横方向の力を生み出しにくく、その分三頭筋の関与が減ると考えられます。


この違いはトレーニング効果にも表れます。

三頭筋の筋肥大を狙う場合、バーベルベンチプレスの方が有利でしょう。

実際、ベンチプレス後に行う三頭筋エクササイズ(例えばトライセプスエクステンション)の筋電図を比較した研究では、ダンベルよりバーベルのベンチプレスを先に行った方が三頭筋の筋活動が高まったという結果もあります。

バーベルで先に三頭筋をしっかり使い切って疲労させ、その後に他の種目で三頭筋を追い込むことで効率的に鍛えられるという考え方です。

総じて、上腕三頭筋の強化という点ではバーベルベンチプレスが優れるといえます。

ただし、ダンベルベンチプレスで三頭筋への刺激が少ない分、胸筋に集中しやすいというメリットもあります。

トレーニングメニュー上は、胸を狙った後半種目としてダンベルプレスを入れることで、疲労した三頭筋に邪魔されず胸にフォーカスできるという活用法も考えられています。

持ち上げられる重量と筋力向上効果の違い

筋力(1RMなど最大重量を挙げる能力)の観点では、バーベルベンチプレスの方が重い重量を扱えることは経験則でも知られています。

実際に研究でも「バーベルではダンベルより約20%重い重量を挙上できた」と報告されています。

Saeterbakkenらの比較では、被験者の1RMはダンベル合計重量よりバーベルの方が17%程度高く、わずかながらSmithマシンよりもバーベルが重かったとされています。

これはバーベルでは両腕が連結され安定するため、一方の腕だけでは支えきれない重量も両腕で協力して挙げられるからです。

また小刻みな重量増加(プレートで2.5kg刻み等)が可能なため、漸進的過負荷(徐々に重量を増やすトレーニング)による筋力向上が行いやすいことも利点です。

そのため、筋力そのものを伸ばす目的ではバーベルに軍配が上がるでしょう。特にベンチプレスはパワーリフティング競技種目でもあり、最大筋力を高めたい場合はバーベルでのトレーニングが必須となります。

しかし、これは「どちらで鍛えた方が強くなるか」という問いとは少し異なります。

興味深いことに、バーベルとダンベルのどちらでトレーニングしても筋力が向上する度合いはさほど変わらない可能性も示唆されています。

2023年のSmoakらの研究では、抵抗トレーニング経験者を対象にバーベルベンチプレスだけ、またはダンベルベンチプレスだけで数週間トレーニングさせたところ、どちらのグループも上半身の1RMやパワー(重量挙上の瞬発力)を同程度に向上させたと報告されています。

つまり、どちらの種目でもしっかり筋力アップは可能であり、「ベンチプレスをやらないと胸の筋力がつかない」ということはありません。

特に一般的な筋力向上(スポーツパフォーマンス向上や日常生活の筋力アップ)であれば、ダンベルでも十分効果が得られます。

一方で、トレーニングの「特異性」も考慮すべきです。バーベルベンチプレスで挙上重量を伸ばしたければ、その動作に習熟し神経系を適応させる必要があります。

ダンベルで鍛えた筋力は基本的にバーベルにも応用できますが、バーの安定した軌道やフォームに慣れていないと、重量更新がスムーズにいかない場合もあります(その逆も然りです)。

要約すると、最大筋力を追求するならバーベル、汎用的な筋力アップにはどちらでもOKというイメージです。

初心者・中級者・上級者別の考察

トレーニング経験の違いによって、バーベルとダンベルの使い分けや効果の感じ方が異なる場合があります。それぞれのレベルでのポイントを整理してみましょう。

  • 初心者の場合

ウェイトトレーニングを始めたばかりの方にとっては、バーベルベンチプレスの方がフォーム習得が簡単で扱いやすいことが多いです。

バーベルは軌道が安定しており、左右のバランスをとる必要がないため、まずは胸や腕に力を入れる感覚をつかみやすいでしょう。

また、バーベルならシャフトにプレートを足していくだけで2.5kg刻みなど細かく重量を増やせるので、進捗を管理しやすいメリットがあります。一方、ダンベルベンチプレスは左右それぞれでバランスを取らねばならず、特に高重量になるとダンベルをセットポジションまで持ち上げる動作自体が難しく感じるかもしれません。

とはいえ、初心者がダンベルを避ける必要はありません。軽めの重量からフォームを練習すれば問題なく、安全面でもスポッター(補助者)がいない場合はダンベルの方が失敗時に横に落とせて安心です。

総じて、初心者はまずバーベルで基礎的な筋力とフォームを身につけつつ、補助的にダンベルも取り入れて左右差の改善や安定性の向上を図るのがおすすめです。

  • 中級者の場合

トレーニングに慣れてきた中級者は、バーベルとダンベルの両方を目的に応じて組み合わせると良いでしょう。

例えば筋肥大が目的であれば、ワークアウトの前半にバーベルベンチプレスで高重量・低回数のセットを組み、胸筋に最大限の過負荷を与えます。

その後、後半にダンベルベンチプレス(場合によってはインクラインなど角度を変えて)で中程度の重量・高回数のセットを行えば、可動域を広く使って胸に焼き付くような刺激を与えられます。

このようにバーベルで筋力・全体的な筋量アップ、ダンベルで筋肉の仕上げや弱点補強といった使い分けが考えられます。

また、中級者になると左右差やフォームの癖が現れてくる場合もあります。その際はダンベルを用いることで弱い側も均等に鍛えられ、アンバランスの是正に役立ちます。

研究でもバーベルとダンベルのエクササイズを交互に用いることでマンネリを防ぎ、筋力の停滞を打破できる可能性が示唆されています。中級者は積極的に両者を取り入れ、トレーニングの幅を広げるのが良いでしょう。

  • 上級者の場合

上級者ともなると、筋力も筋肥大も相当のレベルに達しており、それぞれの種目の微妙な利点を生かしたトレーニング戦略を立てています。

例えば、パワーリフティングなどベンチプレスの記録向上が主目的の場合、トレーニングはバーベルベンチプレス中心になります。上級者ほど神経系の適応が重要になるため、競技動作であるバーベルのフォーム練習や高重量でのセットが最優先です。

それでもダンベルを全くしないわけではなく、補助種目としてダンベルベンチプレスやダンベルフライを行い、可動域の拡大や細部の筋肥大を狙うことがあります。

ボディビル目的の上級者であれば、バーベルでの高重量刺激とダンベルでのストレッチ刺激をバランスよく組み合わせ、さらなる筋肥大を図ります。

関節への負担という点でも、バーベルで重い重量ばかりでは肩や肘が疲弊しがちなので、ダンベル種目やマシン種目で負荷を分散する工夫も上級者は行っています。上級レベルでは結局、「どちらが優れているか」ではなく「如何に両方を活用するか」が鍵だと言えるでしょう。

まとめ:どちらを選ぶべきか?

ベンチプレス(バーベル)とダンベルベンチプレスは、それぞれ長所と短所がありますが、筋肥大に関しては両者とも有効であり、大胸筋と三角筋前部への効果はほぼ同等と考えられます。

上腕三頭筋の発達に限って言えばバーベルの方が優れますが、その分ダンベルは胸にフォーカスしたトレーニングが可能です。筋力向上という面ではバーベルがより重い重量を扱え漸進的な負荷アップが容易なため有利ですが、ダンベルでも十分筋力は向上し得ます。

特に一般的なフィットネス目的であれば、どちらか一方に固執する必要はありません。

最終的な種目選択はあなたの目的や状況に応じて決めるのが良いでしょう。

例えば「胸囲を大きくしたい」「ベンチプレスの記録を伸ばしたい」のであれば、まずはバーベルベンチプレスで高重量に挑戦しつつ、補助でダンベルプレスを追加するのがおすすめです。

一方「自宅トレーニングで機材が限られる」「安全に一人でトレーニングしたい」場合はダンベルベンチプレスが現実的です。

初心者はバーベルで基礎を築きつつダンベルも並行して練習すると良いですし、中上級者は両者を計画的に使い分けて停滞期を乗り越えたり弱点部位を強化したりできます。どちらの種目も上手く活用して、厚い胸板と強い上半身を目指しましょう!


参考文献

 

  1. Saeterbakken, A. H., van den Tillaar, R., & Fimland, M. S. (2011). A comparison of muscle activity and 1-RM strength of three chest-press exercises with different stability requirements. Journal of Sports Sciences, 29(5), 533-538.

  2. Welsch, E. A., Bird, M., & Mayhew, J. L. (2005). Electromyographic activity of the pectoralis major and anterior deltoid muscles during three upper-body lifts. Journal of Strength and Conditioning Research, 19(2), 449-452.

  3. Farias, D. d. A., Willardson, J. M., Paz, G. A., Bezerra, E. d. S., & Miranda, H. (2017). Maximal strength performance and muscle activation for the bench press and triceps extension exercises adopting dumbbell, barbell, and machine modalities over multiple sets. Journal of Strength and Conditioning Research, 31(7), 1879-1887.

  4. Smoak, Y., et al. (2023). A Randomized Trial Comparing Barbell and Dumbbell Bench Press on Maximal Strength and Power Output. Journal of Strength and Performance, 2(1).

  5. Schwanbeck, S. R., Cornish, S. M., Barss, T., & Chilibeck, P. D. (2020). Effects of training with free weights versus machines on muscle mass, strength, free testosterone, and free cortisol. Journal of Strength and Conditioning Research, 34(7), 1851-1859.