カフェイン・EGCGによる脂肪酸動員のメカニズム

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2025.05.10

ダイエット

カフェイン・EGCGによる脂肪酸動員のメカニズム

カフェイン・EGCGによる脂肪酸動員のメカニズム

カフェイン・EGCGによる脂肪酸動員のメカニズム

カフェインは中枢神経でアデノシン受容体を阻害し、交感神経活動を高めます。またホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害してcAMPを増加させ、ホルモン感受性リパーゼを活性化して脂肪組織からの脂肪酸放出を促進します。

実際、安静時でもカフェイン摂取により血中遊離脂肪酸やグリセロール濃度が有意に増加し、脂肪分解が活発になることが報告されています。

一方、EGCG(エピガロカテキンガレート)など緑茶カテキンは、理論上はカテコラミン分解酵素(COMT)を阻害してアドレナリン作用を持続させるとされますが、ヒトでの裏付けは不十分です。

むしろ近年の研究では、EGCGがAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)を活性化し肝細胞で脂肪酸・コレステロール合成を抑制する作用が示唆されています。

減量効果に関する研究結果

臨床試験やメタアナリシスでは、カフェイン・緑茶カテキン摂取による減量効果が検討されています。

例えば15件(計1243人)を解析したメタ分析では、カフェインを含む緑茶カテキン摂取群でプラセボ群に比べ平均体重が約1.38kg減少し、BMIも0.55低下したと報告されました。

緑茶カテキン単独では有意効果が認められない一方、カフェイン併用が必要と結論づけられています。

また別のシステマティックレビューでは、EGCG100~460mg/日とカフェイン80~300mg/日を12週間以上継続摂取することで体脂肪・体重減少効果が大きくなったと示されました。

しかしながら、研究の多くは減量効果が「数百g~数kg」の小幅なものであり、被験者の民族や生活習慣による差も指摘されています。

例えば同じ12~13週介入でも、欧米の試験では体重変化0.0kg前後であったのに対し、日本やアジアの試験では緑茶群で0.2~3.5kg程度の減少が報告される傾向にあります。

摂取量の目安としては、研究ではカフェイン100~300mg/日、カテキン約500~700mg/日(そのうちEGCGは100~400mg)が用いられることが多く、これらで減量効果が検証されています。

さらにエネルギー消費を調べたメタ分析では、カテキン+カフェイン摂取で24時間あたりエネルギー消費量が約4.7%増加し、24時間脂肪酸酸化量が12.2g(約16%)増加した一方、カフェイン単独では脂肪酸酸化の有意増加は見られなかったと報告されています。

近年のメタ解析でも、カフェイン摂取量を倍にすると体重減少効果が約22%増す(BMIで17%増、体脂肪量で28%増)との結果が示されており、カフェイン自体にも減量効果がある可能性が示唆されています。

運動中の脂肪酸代謝・パフォーマンスへの影響

運動時の脂肪燃焼やパフォーマンス向上に対する効果も報告があります。

カフェインは運動中の脂肪酸酸化を高める働きが知られており、最近の研究では3mg/kg(70kgで約210mg)のカフェイン摂取でサイクリング中の最大脂肪酸酸化率(MFO)が朝に約10.7%、夕方に約29.0%上昇し、Fat_max(脂肪酸優先燃焼強度)も11~13%向上することが示されました。

一方、EGCG単独の効果は不明瞭で、270mg/日のEGCGを6日間摂取しても脂肪酸酸化や持久パフォーマンスの改善は認められなかったという報告もあります。

しかし別の研究では、運動の24時間前に約366mgのEGCGを摂取したところ、30分間の中強度サイクリング中の脂肪酸酸化率が17%増加したとする結果も得られています。

総じて、カフェインは運動パフォーマンスを向上させやすいのに対し、EGCGはカフェインとの相乗効果や長期摂取と組み合わせることで脂肪燃焼促進作用が期待できるものの、単独では効果が限定的と言えます。

安全性と副作用

カフェインとEGCGの安全性についても検討されています。

健康な成人では1日400mg程度までのカフェイン摂取は大部分の研究で有害事象がみられず安全域とされています。

ただし妊婦や授乳婦では200~300mg/日以内に制限するよう推奨されています。過剰摂取時には不眠、興奮・不安感、心拍数増加、胃腸症状などが起こることが知られており、特に心疾患など基礎疾患のある人は注意が必要です。

一方、緑茶・EGCGは一般的な飲用量であれば安全性は高く、ヒトの臨床試験では1回1.6gまでの摂取が「よく耐容できる」と報告されています。ただしサプリメントなどで非常に高用量を摂ると、まれに肝障害のリスクがあります。実際、緑茶エキス服用者で数多くの肝炎類似症状例が報告されており、サプリ製品の過剰摂取には警戒が必要です。

実践的まとめ

  • 適度な摂取で脂肪燃焼をサポート:朝のコーヒー(約100–200mgカフェイン)や緑茶は安静時でも脂肪酸の放出を促し、運動中の脂肪燃焼を高めます。特に運動前のカフェイン摂取は脂質代謝を活性化し、持久力向上にもつながります。

  • 減量効果は穏やか:緑茶エキス(EGCG)+カフェインの併用で数週間~数ヶ月の介入により体脂肪や体重がやや減少する例が多く報告されています。しかし減量効果は「魔法の薬」レベルではなく、減少量は数百グラム~数キログラム程度にとどまることがほとんどです。運動・食事制限など健康的な生活習慣と組み合わせて活用すると効果的でしょう。

  • 安全上の留意点:健康成人のカフェイン上限は約400mg/日(コーヒー約3杯相当)とされ、不眠や動悸、下痢などに注意が必要です。妊婦は200–300mg/日程度までに抑えるべきです。緑茶・EGCGは通常の飲用量(緑茶なら1日数杯程度)では問題ありませんが、サプリで高用量を長期に摂ると肝障害を起こす恐れがあります。

  • 現実的な活用法:カフェインや緑茶はあくまで「補助的」な手段です。例えば運動前のコーヒー1杯や食後の緑茶習慣は代謝促進や覚醒効果をもたらし、トレーニング効率や集中力を支援します。一方、それだけで劇的に痩せるわけではありません。焦らず継続的な運動・バランス良い食生活と合わせて活用するのがポイントです。

 

参考文献: 上記内容は、臨床研究やメタ解析、レビュー論文等に基づいています