脂質はダイエットの敵か味方か?最新科学エビデンスで読み解く脂質と健康
こんにちは! ダイエット中、「脂質を控えれば痩せる」と聞いたことはありませんか?一方で、「良質な脂質は積極的に摂ったほうがいい」「ケトジェニックダイエット(高脂肪食)は効果的だ」という真逆の情報も飛び交っています。脂質について何を信じればいいのか、混乱しますよね。今回は 脂質とダイエットの関係 について、最新の科学的エビデンスをもとに以下の3つのポイントで解説します:
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脂質の摂取量と体重減少の関係 – 脂質を減らすと本当に痩せやすくなるの?
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脂質の種類と健康への影響 – 飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の違いとは?
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高脂質ダイエット(ケトジェニック)と糖質制限 – その効果の違いや持続可能性・安全性は?
専門的な内容も含みますが、できるだけ やさしい言葉 で、ブログらしい語り口でまとめました。ダイエット中の方はもちろん、健康的な食生活に興味がある方もぜひ参考にしてみてくださいね。
1. 脂質の摂取量を減らせば体重は減る? ~脂質摂取とダイエットの関係~
「脂質は1gあたり9キロカロリーもあるから、ダイエット中は極力カット!」 これは昔からよく言われるダイエット常識ですよね。確かに脂質はタンパク質や炭水化物(どちらも1gあたり4キロカロリー)の 2倍以上のカロリー を持つので、脂っこいものを減らせば摂取カロリーが下がり、理論上は体重が減りやすくなります。しかし、最新の研究によれば 「脂質さえ減らせばOK」という単純な話ではない ようです。
まず重要なのは、ダイエットで体重を落とす決め手は 総摂取カロリーを抑えてエネルギー赤字(消費カロリー > 摂取カロリー)を作ること だという点です。
脂質を減らしても、そのぶん他の栄養(糖質など)でカロリーオーバーしてしまえば体重は減りません。実際、複数の減量プログラムを分析したメタ分析でも、「体重減少の主因は摂取カロリーの減少であり、脂質か糖質かといったマクロ栄養素の比率は二次的 な要因に過ぎない」と報告されています ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
では、脂質を控えるダイエット(低脂肪食)は他のダイエット法より効果が劣るのでしょうか? そんなことはありません。脂質を抑える「低脂肪ダイエット」も、糖質を抑える「低炭水化物ダイエット」も、どちらも カロリーさえ適正に抑えられていれば 体重はしっかり減ります 。
例えばアメリカで行われた大規模臨床試験「DIETFITS」では、1年間の減量プログラムで低脂肪食グループと低炭水化物食グループの減量幅に有意差は見られませんでした ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
両グループとも1年で5〜6kg程度の体重減少に成功し、どちらが優れているとも言えなかったのです。
興味深いのは、短期的な違い。糖質制限の一種である「アトキンス・ダイエット」(極端な低炭水化物・高脂肪食)は、カロリー制限なしでも開始から半年程度で有意な減量効果を示すことが報告されています ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
一方で、その 1年後には他のダイエット法(例: 重量管理プログラムのWeight WatchersやZoneダイエットなど)と減量幅がほぼ同じ になっていたというレビュー研究もあります ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
つまり、短期では糖質を減らした高脂肪食が効きやすい傾向があるものの、長期的に見ると結局は総摂取カロリーと継続のしやすさが勝負 であり、脂質を制限したかどうか自体は決定打ではないようです。
では、「脂質を控えるダイエットに意味はないの?」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。
脂質を多く含む食品(揚げ物やバターたっぷりの食品など)を減らすことで 高カロリーな食事を抑制しやすくなる ことは確かですし、特に脂質の多いジャンクフードを控えるのは健康面でもプラスです。
ただし、極端に脂質を恐れて良質な脂肪まで不足 させてしまうと、かえって満腹感が得られず炭水化物を食べ過ぎたり、ホルモンバランスを崩したりする恐れもあります。要は、「脂質ゼロ」を目指す必要はなく、適度に脂質を取り入れつつ全体のカロリーを調整することが大切なのです。
実際、長期的な視点で見れば どのような栄養バランスのダイエットでも、摂取エネルギーを減らし持続できれば体重は減る ことが多くの研究で示されています ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
逆に言えば、自分が無理なく続けられる方法でカロリーコントロールをすることが成功のカギと言えるでしょう。「低脂肪」にこだわりすぎず、自分に合ったやり方で継続することが何より重要ですね。
ポイントまとめ: 脂質を控えること自体は減量に役立ちますが、それ以上に「総カロリーの削減」と「継続できる食習慣」が大切です。低脂肪食も低炭水化物食も、カロリーさえ適切なら減量効果に大差はなく、自分が続けやすい食事法を選ぶことが成功への近道と言えるでしょう。
2. 脂質の「質」も大事!種類別・脂肪酸の健康効果
脂質の量だけでなく、脂質の種類(質) にも目を向けましょう。私たちが食事から摂る脂質には大きく分けて次の3種類があります:
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飽和脂肪酸(Saturated Fats) – 主に動物性食品に多い脂肪。常温で固体の油脂。
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不飽和脂肪酸(Unsaturated Fats) – 主に植物油や魚に多い脂肪。常温で液体の油。
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トランス脂肪酸(Trans Fats) – 工業的に加工された油や一部の天然由来脂肪に含まれる。常温で固体。
これらは体への影響がそれぞれ異なり、「良い脂肪」「悪い脂肪」 と呼ばれることもあります。
ここでは、それぞれの脂質の特徴と健康への影響(体重だけでなく心血管疾患や炎症への影響)について、最新エビデンスを交えて見ていきましょう。
(The Facts on Fats Infographic | American Heart Association)図:脂質の種類ごとに「Love it(積極的に摂りたい)」「Limit it(控えたい)」「Lose it(避けたい)」に分類した米国心臓協会のインフォグラフィック。 左の不飽和脂肪(オリーブオイル、アボカド、ナッツ、魚など)は「積極的に」。
中央の飽和脂肪(バター、チーズ、ベーコンなど動物性食品)は「上限を決めて控えめに」。右のドーナツやケーキのようなトランス脂肪や一部のトロピカルオイル(ココナッツオイルなど高飽和の油)は「可能な限り排除すべき」とされています。この図からも、脂質の種類ごとに健康への推奨度が大きく異なるのが分かりますね。 (The Facts on Fats Infographic | American Heart Association)
それでは各脂肪酸について、もう少し具体的に見てみましょう。
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① 飽和脂肪酸: バターやラード、肉の脂身、乳製品(チーズ、生クリームなど)に多く含まれる脂です。取りすぎると悪影響が懸念されるため「控えめに」すべき脂肪 と位置付けられます。
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長年、飽和脂肪は「動脈硬化を招き心臓に悪い」と言われてきました。飽和脂肪酸を多く摂ると血中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が上昇し、それが心血管疾患のリスクを高めるからです。
そのため米国では「飽和脂肪は総カロリーの10%未満に抑えるべき」という食事ガイドラインがあり、心臓病学会(AHA)は7%以下 を推奨しています 。
一方で、近年「飽和脂肪摂取量と心疾患リスクに明確な関連は見られなかった」という研究報告も出ており (Types of Fat - The Nutrition Source)、飽和脂肪の悪影響について議論が巻き起こっています。
ただし重要なのは、「何と置き換えるか」 です。
飽和脂肪を減らした分をもし精製された炭水化物(白いパンや砂糖など)で補ってしまうと、結局心臓に悪い影響(HDL〔善玉〕コレステロールの低下や中性脂肪の上昇)が起き、トータルのリスクは飽和脂肪を多く摂った場合と変わらなくなってしまいます 。
最新の知見では、飽和脂肪を減らすなら代わりに良質な不飽和脂肪酸を増やすことが重要で、それによってLDLコレステロールが下がり心疾患リスクが低減することが明確に示されています (Types of Fat - The Nutrition Source)。
つまり、飽和脂肪酸自体は適量なら直ちに「毒」ではないものの、やはり摂りすぎは禁物で、できれば植物油や魚油などの良い油と置き換えるのが望ましいと言えます。
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② 不飽和脂肪酸: オリーブオイルや菜種油、ナッツ類、アボカド、青魚などに多く含まれる脂です。健康に「良い脂」の代表で、積極的に摂りたいものです。不飽和脂肪酸にはさらに一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など、オリーブオイルやアボカドに豊富)と多価不飽和脂肪酸(オメガ3やオメガ6脂肪酸、魚油や大豆油・種子油に豊富)がありますが、いずれも総じて心臓や体に良い効果をもたらします。
例えば、多価不飽和脂肪酸(特にオメガ6系リノール酸)の摂取が多い人ほど 心臓病や2型糖尿病のリスクが低い 傾向があることが大規模疫学研究で示されています (Perspective on the health effects of unsaturated fatty acids and commonly consumed plant oils high in unsaturated fat - PubMed)。
また、飽和脂肪をこれら不飽和脂肪に置き換えると心血管疾患の発症リスクが減少するという報告もあります (Perspective on the health effects of unsaturated fatty acids and commonly consumed plant oils high in unsaturated fat - PubMed)。
不飽和脂肪酸はコレステロールの改善にも有効で、悪玉のLDLコレステロールを減らし善玉のHDLコレステロールとのバランスを良くします。
さらに抗炎症作用も持ち、体内の炎症反応を穏やかにする働きがあるとされています (Types of Fat - The Nutrition Source)。魚に多いオメガ3脂肪酸(EPA/DHA)は特に強い抗炎症作用があり、血液をサラサラにして心筋梗塞のリスクを下げることも知られています。
近年、一部で「オメガ6脂肪酸(植物油の主成分)は炎症を起こすのでは?」との誤解もありましたが、最新の臨床研究ではリノール酸を増やしても炎症マーカーは悪化しないことが確認されています (Perspective on the health effects of unsaturated fatty acids and commonly consumed plant oils high in unsaturated fat - PubMed)。
つまり、不飽和脂肪酸は総じて体に優しく、質の良いカロリー源 と言えます。ダイエット中でもオリーブオイルやナッツ、魚などの良質な脂は適量摂ることで満足感を高め、結果的に他のジャンクフードを減らす助けにもなるでしょう。
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③ トランス脂肪酸: 「過剰摂取を避けるべき脂」 として世界的に排除が進められているのがトランス脂肪です。
マーガリンやショートニング、ファストフードの揚げ油、スナック菓子や市販のドーナツ・ケーキ類にかつて多く含まれていました(牛や羊など反芻動物由来の脂肪にもごく微量含まれます)。
人工的に水素添加して硬化させた油であり、食品をサクサク・長持ちさせるメリットがある一方で、健康への害は少なからず存在します。トランス脂肪酸の過剰摂取は悪玉LDLコレステロールを著しく増やし、善玉HDLコレステロールを減らすうえ、体内で慢性的な炎症反応を引き起こすことも分かっています (Types of Fat - The Nutrition Source)。
さらにインスリン抵抗性(血糖値を下げにくくする状態)を高め、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスク要因にもなります 。
過多な摂取は有害で、ある研究では「トランス脂肪由来のカロリーが2%増えるごとに冠動脈疾患のリスクが23%も上昇した」というデータも報告されています 。
こうしたエビデンスから、WHO(世界保健機関)は 「トランス脂肪は年間50万件もの早死に(心臓疾患)に関与する」とし、 2023年までに世界からの排除を各国に呼びかけました 。
現在では多くの先進国で食品へのトランス脂肪酸の使用が規制され、日本でも加工食品における含有量は徐々に減ってきています(とはいえ注意は必要です)。幸い、トランス脂肪酸は栄養的に必須なものではなく、摂らなくても全く問題ない脂肪です 。健康のためにも、できる限り少なく出来るといいですね。
では、脂質の種類で太りやすさは変わるのでしょうか? これは興味深い点ですが、近年の研究で「脂質の質」が体重管理にも影響を及ぼす可能性が示唆されています。
ハーバード大学の追跡研究によれば、長年の食生活で 飽和脂肪やトランス脂肪の摂取比率が増えた人ほど体重が増加しやすく、一方で不飽和脂肪(特に多価不飽和脂肪)の摂取比率を増やした人はむしろ体重増加が少なかった という結果が出ています (Changes in Types of Dietary Fats Influence Long-term Weight Change in US Women and Men - PubMed)。
具体的には、飽和脂肪を全カロリーの5%増やす(糖質5%減らす)ごとに4年間で約0.6kg体重が多く増え、トランス脂肪では1%増やすごとに0.7kg体重増加が上乗せされました。
この結果から、同じカロリーでも飽和脂肪やトランス脂肪は太りやすく、不飽和脂肪は太りにくい(体重増加を防ぐ)可能性があります。
ただし、これは観察研究であり因果関係を直接証明するものではありません。ただ、普段の食事で質の良い脂肪を選ぶことが体重コントロールにも役立つとすれば嬉しいですよね。少なくとも、脂肪の質を改善すると食習慣全体が整い、結果的に摂取カロリーや代謝にも良い影響が及ぶのかもしれません。
ポイントまとめ: 健康のためには脂質の「量」以上に「質」に気を配りましょう。飽和脂肪酸は控えめに(摂るなら他の良い油と置換)、不飽和脂肪酸は積極的に取り入れてOK、そしてトランス脂肪酸は極力少なくするのが鉄則です 。
質の良い脂は心臓や代謝に良い影響を与え、長期的には体重管理にもプラスに働く可能性があります。
3. ケトジェニック(高脂肪)ダイエット vs 従来の糖質制限:効果・持続性・安全性の比較
近年話題のケトジェニックダイエット(ケトダイエット)とは、極端に糖質を減らし、その分脂質をたっぷり摂る食事法です。
一般的な糖質制限(例えば「緩やかな低炭水化物ダイエット」)よりも糖質量を厳しく制限するため、体がエネルギー源として脂肪を積極的に燃やし、ケトン体と呼ばれる物質を産生する状態(ケトーシス)になります。
このケトーシス状態では食欲が抑えられたり脂肪燃焼が効率化されたりするとされ、短期的な減量に効果が高いと言われています。
一方で、糖質を極限まで減らす分食事の内容が偏りやすく、長期的な安全性や継続のしやすさには議論もあります。ここでは、ケトジェニックダイエットを中心に、高脂肪・低糖質食と通常の糖質制限(あるいは他の食事法)との違いを比較してみましょう。
● 減量効果の違い: ケトジェニックダイエットは開始後比較的すぐに体重が減りやすい傾向があります。理由の一つは、糖質をカットすると体内のグリコーゲン(糖の貯蔵)が枯渇し、水分と一緒に排出されるため数日~1週間で2~3kgの体重減少が起こりやすいことです(いわゆる「水抜け」効果)。さらにケトーシスになると空腹感が和らぎ、カロリー摂取が自然と減る人が多いことも寄与します。
実際、ケトジェニックのような厳しい低糖質食は短期減量に非常に強力で、メタ分析でも1〜3か月で数kg多く減量できたとの結果があります ( Low-Carbohydrate Diet is More Helpful for Weight Loss Than Low-Fat Diet in Adolescents with Overweight and Obesity: A Systematic Review and Meta-Analysis - PMC )。
しかし、長期的(1年以上)に見ると他のダイエットとの減量効果の差は小さくなる傾向があります。前述のように1年スパンの比較では低脂肪食と低糖質食で体重減少に差がなかったという報告もあるくらいです ( Optimal Diet Strategies for Weight Loss and Weight Loss Maintenance - PMC )。
鍵となるのは「継続できるか」。ケトジェニックは減量効果が高くても挫折して途中で通常食に戻してしまえばリバウンドしてしまいます。したがって、短期集中で体重を落としたい場合に有効ですが、減った後それを維持するには相応の工夫が必要と言えるでしょう。
● 健康への影響(代謝・内臓への作用): ケトジェニックダイエットは体重を減らすだけでなく、血糖コントロールや中性脂肪の改善に効果的です。糖質摂取を大幅に減らすことで食後血糖の急上昇を防ぎ、インスリン分泌を抑えます。その結果、血中中性脂肪(トリグリセリド)は減少し、HDLコレステロール(善玉)は増加する傾向があります 。
特に2型糖尿病の患者さんでは、ケトジェニックによる劇的な血糖値・HbA1cの改善が報告されており、内臓脂肪の減少も相まって 糖尿病の症状緩和 に寄与します (Impact of very low carbohydrate ketogenic diets on cardiovascular risk factors among patients with type 2 diabetes; GRADE-assessed systematic review and meta-analysis of clinical trials | Nutrition & Metabolism | Full Text)。
また、ケトジェニックではエネルギー源として体脂肪が積極的に使われるため、内臓脂肪や腹部肥満の解消に効果的とも言われます。
一方で注意すべきはLDLコレステロール(悪玉)の上昇です。ケトジェニックの食事内容によっては飽和脂肪(お肉やバターなど)が増えやすく、かなりの人でLDLコレステロールが上がります 。
研究でも、ケトジェニック実践者ではLDLが有意に増加したとの報告があり 、長期的な心血管リスクへの影響が懸念されています。
ただし個人差も大きく、脂質の質を工夫(動物脂肪ではなくオリーブオイルや魚中心にする等)することでLDL上昇を抑えられたというデータもあります ( Effects of ketogenic diet on health outcomes: an umbrella review of meta-analyses of randomized clinical trials | BMC Medicine | Full Text)。
ケトジェニックでは意識的に良質な脂肪を選ぶことが大切ですね。また、ケトジェニック開始直後に起こる「ケトフルー(倦怠感や頭痛、吐き気など)」や、長期での便秘・電解質不足にも注意が必要です。野菜や果物、穀物が制限される分、食物繊維やカリウムなどが不足しがちなので、サプリメントや工夫で補うことが推奨されます。
● 持続可能性(続けやすさ)の違い: ケトジェニックダイエットは食べられるものがかなり限られるため、長く続けるハードルは高めです。主食のご飯・パン・麺類、イモ類や果物もほとんどNGとなるため、外食や他人との食事の際に支障が出やすいでしょう。
その反面、「肉やチーズ、バターはOKなので満足感がある」「糖質を我慢すればカロリー計算しなくても好きなだけ食べられる」といった利点もあります。
実際に研究では、低脂肪食 vs 低炭水化物食の長期試験で 約80%が完走できた ケースもあり、工夫次第では継続も不可能ではありません。ただ一般論としては、ケトレベルの厳しい制限は 人によって向き不向きが大きいです。
「お米や果物が大好き!」という人には大きなストレスになりますし、ある程度緩い糖質制限(例えば糖質を1日100g程度に抑えるような食事)のほうが続けやすくトータルでは成功する場合もあります。
継続できなければ意味がないので、自分のライフスタイルや嗜好に合ったやり方を選ぶことが大切です。「ほどほどの低糖質+適度な脂質」でゆるく続ける中庸な方法も選択肢に入れて良いでしょう。
● 安全性・リスク: ケトジェニックダイエット自体は短期間であれば概ね安全とされています。体がケトン燃焼に慣れるまでの数日間に先述の「ケトフルー」症状が出ることがありますが、多くは一過性です。
ただし 長期の安全性についてはデータが不足 しています。数ヶ月~1年程度の試験では問題ないケースが多いものの、何年も継続した場合の心血管への影響(LDL上昇による動脈硬化リスクなど)や腎機能への負担などはまだ十分研究されていません。
また、ケトジェニックは 妊娠中や特定の持病(肝疾患や膵疾患など)がある場合には推奨されません。糖尿病でインスリンや薬を使っている方も、急激に血糖が下がる恐れがあるため医師の指導の下で行う必要があります。さらに、一部の人ではケトジェニックで筋肉量が落ちやすいとの指摘もあります (Effects of ketogenic diet on health outcomes: an umbrella review of meta-analyses of randomized clinical trials | BMC Medicine | Full Text)。
糖質が少ないと筋肉の分解が進みやすい可能性や、食事中のタンパク質不足、または水分不足による一時的な筋肉量低下などが考えられます。筋力維持のためには、ケト中でも十分なタンパク質摂取(場合によっては筋トレの併用)を心がけると良いでしょう。
まとめると: ケトジェニックダイエットは「短期間で体重を減らし、血糖値や中性脂肪を改善する」という点では非常に強力で有効な手段です 。
しかし、「長期間続けにくい」「LDLコレステロールが上がる可能性」といった課題もあります 。
一般的なゆるい糖質制限やバランスの良い食事と比べてどちらが優れている、というよりも、自分の目標と体質に合った方法を選ぶことが大事でしょう。
例えば、「まずは2〜3ヶ月で集中的に減量したい」という場合はケトジェニックを取り入れ、その後は徐々に通常のバランス食に移行する、といった使い分けも一つの戦略です。逆に「ゆっくりでもいいから長く続けたい」という方は、極端なケトにこだわらず中程度の糖質制限+適度な良質脂肪くらいが現実的かもしれません。
おわりに:脂質とうまく付き合って健康的にダイエットしよう
脂質とダイエットの関係について、最新の知見を踏まえて3つの視点から見てきました。「結局どうすればいいの?」と感じた方のために簡単にまとめますね。
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脂質を控えるだけで魔法のように痩せるわけではないけれど、カロリー調整の一環として脂質を減らすことは有効。ただし炭水化物など他で過剰摂取しないようバランスが大事。自分が続けやすい方法で総摂取カロリーを減らすことが肝心です。
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脂質の“質”は健康に直結。 飽和脂肪は適量に留め、不飽和脂肪を積極的に取り入れましょう。飽和脂肪の悪影響は置き換える食品の質によりますが、良質な油に置き換えれば心臓病リスクも下がります。トランス脂肪は摂りすぎには注意が必要です。
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ケトジェニックなど高脂肪ダイエットは減量に有効ですが、続けるハードルや安全性も考慮しましょう。短期勝負には強い味方ですが、長期戦なら無理のない範囲で糖質と脂質を調整する方法でも十分成果は出せます。
最後に強調したいのは、「これさえ食べれば絶対痩せる」という万能の食べ物や、「これだけは絶対食べてはいけない」という悪者は存在しないということです。
脂質はカロリーが高いからと敵視されがちですが、質の良い脂質は私たちの体に必要不可欠な栄養であり、上手に摂ればダイエットの強い味方にもなります。結局のところ、自分の体質・ライフスタイルに合った食事法を見つけ、それを楽しく長く続けることが健康的なダイエット成功の秘訣です。脂質とうまく付き合いながら、バランスの良い食生活で理想の体と健康を手に入れましょう!
では、また次回も健康に関するトピックでお会いしましょう。ここまでお読みいただきありがとうございました!